研究概要 |
本研究では,らせん分子であるヘリセンジオールの構造と機能・物性の関連を明らかにするため,立体的に嵩高い置換基を有する新規なヘリセンの合成を行なった。すなわち,[7]チアヘテロヘリセンに2.4等量のブチルリチウムを作用させてジリチオ体を作り,これに3等量のベンゾフェノンを反応させることにより,ヘリセンジオールを72%の収率で合成することに成功した。このヘリセンジオールをエタノールとクロロホルムの混合溶媒で再結晶して淡黄色の結晶を得た。結晶のX線構造解析を低温(150K)で行なったところ,結晶の空間群はP2_1であり,エタノール1分子とクロロホルム1分子を取り込んでいることが明らかとなった。結晶中では,ヘリセンジオールの水酸基間の水素結合の距離は2.84オングストローム,ヘリセンジオールとエタノールの水酸基間の水素結合は2.69オングストロームあった。また,ヘリセンジオールをアセトンから再結晶したところ,ヘリセン、ジオール:アセトン=1:2とヘリセンジオール:アセトン=2:3の2種類の包接結晶を得ることができた。以上のように,らせん分子の構造を変化させることにより,自己集合や包接現象という新しい機能を発現することに初めて成功した。
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