研究概要 |
脳の多彩な精神活動は,神経細胞によるエネルギー代謝とそれにともなう酸素の消費によって支えられている.脳活動が変動すると脳の血流量や血液内ヘモグロビン(Hb)の酸素化度が変化するため,これらを測定することは,動物の精神活動を探る糸口となることが期待される.本研究ではイヌの精神活動の分析に,近赤外分光法による脳Hb酸素化度の測定が利用可能か否かを検討した. 1.麻酔下のイヌによる脳血流測定の基礎的解析 脳血流量を測定する際に筋血流量の影響が障害となる可能性があるため,麻酔下のイヌを用いて検討した.プローブを外科的処置により露出させた頭蓋骨表面に装着した場合と,皮膚表面からあてた場合とで測定値を比較し,測定における筋血流量の影響を調べた.呼気中酸素分圧や頚動脈の開閉等を行って検討した.プローブを頭部正中に装着すれば,筋血流量の変化の影響を抑えて脳血流量を測定できる可能性が高いことが示された.さらに,脳特異的血流変化が検出できるかどうかを検討した.脳は二酸化炭素に感受性が高いため,これを吸入させてその影響を調べたところ,脳に特徴的な変化が観察された. 2.無侵襲・無麻酔・無拘束のイヌにおける脳血流測定 イヌの情動変化を近赤外分光法で捉えることができるか否かを検討するため,イヌにとって望まれる状況と望まれない状況を設定し脳血流の変化を観察した.餌を与えて喜ばせた場合,Hb酸素化度の低下が認められた.別離不安の見られるイヌについて,飼い主がイヌから離れて隠れたところ,Hb酸素化度の一過性の上昇とそれに続く比較的長時間の低下が観察された
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