一酸化窒素(NO)は中枢神経において、神経伝達物質作用を有し、神経可塑性等に関与する。一方、NOはグルタミン酸誘発性神経障害や種々の神経変性疾患にも関与すると考えられている。NOは3種のNO合成酵素(NOS)アイソフォームによりアルギニンから合成されるが、同時にシトルリンが生じる。シトルリンはアルギニノコハク酸合成酵素(AS)およびアルギニノコハク酸リアーゼを(AL)が存在するとアルギニンに再生される(シトルリン-NOサイクル)。神経系細胞でこのサイクルが働いているかどうか調べた。 ラット・グリオーマC6細胞を大腸菌リポ多糖(LPS)、インターフェロンγ(IFNγ)およびtumor necrosis factor-α(TNFα)で刺激すると誘導型NOS(iNOS)mRNAが6時間で誘導され、12時間で最大となり、その後減少した。ASmRNAは刺激的前に検出されたが、刺激後iNOSmRNAとほぼ同じ時間経過で誘導された。一方ALmRNAも刺激前に検出されたが、刺激による誘導は見られなかった。免疫ブロット法ではiNOSタンパク質は12時間で誘導され、その後低下した。ASタンパク質は12時間で誘導され48時間まで徐々に増加した。以上の結果により活性化C6細胞においてシトルリン-NOサイクルが誘導され、シトルリンからアルギニンが再生され、NO合成に供給されるものと考えられる。
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