研究概要 |
目的 胃ガンは大きく分化型と未分化型に分類され、一部では腸上皮化生との関連が言われているが、がん化に関与する遺伝子変化についてはまだよくわかっていない。我々は、従来の研究とは視点を変えて、形態形成に関連する遺伝子の発現に着目して、がん化との関連を検討した。 結果と考察 CDX1と2は、小腸や大腸の形態形成に関与する転写因子である。胃がん細胞株11例におけるこれらの遺伝子の発現を、RT-PCR法で検索した。CDX2の発現は、分化型胃がん細胞で最も強く、未分化型になるにつれて弱まり、硬がんの2例では陰性だった。CDX1の発現は、11例全てで見られなかった。故に、腸特異的転写因子であるCDX2の発現が、分化型胃がんに特徴的であることが明らかとなった。今後、腸上皮化生などでのCDX2の発現を調べて、さらにがん化への関与を検討したい。 GATA4,5,6も転写因子であるが、腸よりも胃の分化に関連が強い。これらを同様に11例の胃がん細胞株で発現を調べた結果、GATA4と5は、各々4例と6例で発現が検出されなかった。一方、GATA6は全ての細胞で発現がみられた。従って、GATA4と5は一部の胃がんの発現機構に関与している可能性が示唆された。
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