研究概要 |
B0(B0a及びB0b)蛋白がテロメアDNAと特異的に結合することを明らかにするとともに,B0蛋白のテロメア維持機構への関与を明らかにする事を目的として研究をおこない以下結果が得られた。 1)hnRNPA2/B1遺伝子のスプライシングアイソフォーム4種の組換え蛋白(A2,B1,B0a,B0b)を作成,精製し,生化学的な特徴を検討した結果,B1,B0b蛋白はA2,B0a蛋白に比して安定で親水性が高いこと,またアイソフォーム間は互いに結合することを明らかにした. 2)一本鎖テロメアDNAとの結合能を比較した結果,A2,B0a<<B1,B0b蛋白の順に強かった.そこでB1及びB0b蛋白と結合する塩基配列の特異性を検討した.その結果,B0b蛋白はB1蛋白よりもテロメア配列特異的に強く結合し,その結合単位はTTAGGの5塩基であることを明らかにした. 3)B0b蛋白が結合した一本鎖テロメアDNAは,ヌクレアーゼによりほとんど分解されないことを明らかにした. 4)培養癌細胞から抽出したテメラーゼ活性分画にB0b蛋白を加えると,試験管内のテロメア伸長反応が亢進することを明らかにした. 以上,hnRNPA2/B1アイソフォーム蛋白のうちB0b蛋白は,一本鎖テロメアDNAに配列特異的に結合し,ヌクレアーゼからの保護作用を示すとともに,テロメア伸長反応にも影響を及ぼすことを試験管内の実験で明らかにした.B0蛋白は生理的にテロメア長が維持される精巣に組織特異的に発現されることから,B0蛋白が哺乳動物の生体内でもテロメア維持機構に深く関わっていることが予測された.
|