研究概要 |
病原性大腸菌のある種のものはCNFを産生することが知られている。CNFはその分子性状の違いからCNF1,CNF2の2種類が報告されており、両者はともに約115kDaの蛋白毒素で遺伝子クローニングの結果からアミノ酸レベルで83%の相同性、99%の類似性を示すことが明らかにされている。最近、私共、およびドイツ、フランスのグループによってCNFの作用メカニズムが明らかにされ、ともに低分子量G蛋白質のGTPase catalytic domainに存在するグルタミン残基を脱アミド化するデアミダーゼであることが示された。しかし、その基質特異性は両者で異なり、CNF1は低分子量G蛋白Rho,Cdc42を修飾し、CNF2はRho,Rac1を修飾することが明らかになっている。Rho,Rac,Cdc42は低分子量G蛋白質のなかでも構造が似ており、Rho familyに属するが個々の細胞内における機能は異なっていると考えられている。 dnaQ変異を有する大腸菌株MKS148dnaQ49ompC-を用いて、cnf1およびcnf2遺伝子を有するプラスミドで形質転換し、非許容温度で菌を培養することによって変異を導入した。毒素遺伝子を含むプラスミドと和合性を示すプラスミドにrhoA,rac1,cdc42cDNAをそれぞれクローニング後、発現用の大腸菌を形質転換した。その形質転換株に得られた変異毒素遺伝子のライブラリーをさらに形質転換し、IPTG誘導によって変異毒素を発現させた。修飾されたrhoA,rac1,cdc42遺伝子産物を抗63E抗体を用いてスクリーニングを行ったが、コロニーハイブリダイゼーションではバックグラウンドが極めて高く、本方法によって変異毒素遺伝子をスクリーニングすることはできなかった。
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