研究概要 |
54才男性の胃体部に発生したEBV陽性低分化型腺癌の手術切除組織を病理組織学的、ウイルス学的、免疫学的に検討した。免疫組織染色で腫瘍組織内には、CD3、CD4、CD8、TCRαβが陽性のリンパ球が浸潤していた。癌組織を用いたウエスタンブロットでEBNA1陽性、EBNA2、LMP1は陰性だった。RT-PCRではEBNA1陽性、EBNA2、LMP1、LMP2Aは陰性だった。これらより、Latency IのEBV潜伏感染と考えられた。培養された組織浸潤T細胞(tumor infiltrating lymphocyte;TIL)はCD3,83%;CD4,34%;CD8,53%;CD16,3.8%であり、CD8陽性のT細胞が半数以上であった。、このTILは自己のLCL(EBV感染B細胞株)と、HLA-A24陽性のLCLを障害した。障害活性はCD8陽性のT細胞分画にみられ、認識する抗原は、これまでに報告されているEBNA3A,EBNA3B,LMP2A由来のHLA-A24結合性の抗原ペプチドではなかった。またEBV潜伏感染蛋白を発現する9種のワクチニアウイルスをそれぞれ感染させたHLA-A24陽性標的細胞はTILによって障害されなかった。自己のLCLを認識するCD8陽性のT細胞が患者末梢血に比べて、癌組織においてより高頻度に存在することが、limiting dilution assayおよびenzyme-linked immunospot assayを用いて示された。EBV陽性胃癌に浸潤するCD8陽性のT細胞は、自己のLCLによって提示されるなんらかの抗原に反応して増殖していることが示された。この反応には細胞由来の抗原も関与している可能性があると考えられた。
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