研究概要 |
「子供の過激行動は、サリチル酸、着色料,着香料などの食品添加物が原因である」とのFeingold B.F.(1973年)の指摘は、未だ解明されていない。その一端を明らかにすべく、食品添加物摂取頻度調査と行動特性に関するアンケート調査およびラット脳神経細胞(B103)を用いた食品添加物の毒性評価を行い,小児期における食品添加物と問題行動の関係について検討した。その成果と問題点について報告する。 (1)小中学生を対象にした生活習慣調査データを活用して、A型行動特性と食品添加物摂取頻度(インスタント食品、清涼飲料水など)の関係について解析したが、統計的に有意な結果は得られなかった。 (2)ラット脳神経細胞を用いた食品添加物の細胞毒性について検討したが、微量元素について量-反応関係を認めたものの、特筆すべき反応結果は見られなかった。今後は、むしろ実験動物を用いた行動異常に関する検討が必要不可欠であると考える。 (3)食品添加物1日摂取量の把握の問題として、添加物の定量は困難であること、既存の資料から換算する場合、加工食品の種類と添加物含有量のばらつきが大きいこと、摂取頻度から摂取量に換算する場合のあいまい性など解決すべき課題が山積していることが指摘された。 (4)問題行動の把握については、試行錯誤の結果、調査対象の特定・選択と調査への協力・理解・承諾(インフォームド・コンセント)を得ることが困難であることがわかった。今や、一般の小中学生を対象にした調査、採血、肥満指導等においてすら、保護者の承諾を得ないと何もできない時代となっていることからも納得できる厳しい現実を思い知らされた感がある。 (5)近年、我が国でもADHD(注意欠陥多動性障害)の存在が認識・注目されるようになってきたが、食生活、特に食品添加物との関連性については殆ど議論されていない。
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