研究概要 |
表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いてKチャネルに対する抗体および抗アセチルコリン受容体抗体の測定を試み,SPR法の有用性が確認された。 (1)抗Kチャネル抗体 α-dendrotoxinを用いた二重免疫沈降法およびpatch clamp法にて抗Kチャネル抗体が陽性であった2例のIsaacs症候群患者血清が,voltage-gated K channelのどの部位を認識するかについてSPR法を用いて検討した。VGKC(kv1.6)のc-DNAより3つの細胞外ドメイン(S1-S2,S3-4,S5-S6)にあたるDNA配列をサブクローニングし,GST蛋白と融合するようにベクターに挿入,大腸菌にtransfectし蛋白発現をIPTGにて誘導した。得られた各細胞外ドメイン蛋白はgluthation sepharoseカラムにて生成し,イムノブロットで抗GSTにて蛋白の発現を確認した後,SPR法に用いた。その結果,1例において,ドメインS1-S2のみが濃度依存性に患者IgGと反応し有意な共鳴角の変化を認めた。その他のドメインや健常者IgGを用いた場合には有意な変化は認められなかった。同リコンビナント蛋白を用いたイムノブロットでは通常の方法では反応は認められず,先にリコンビナント蛋白と患者血清を反応させた後protein Gで回収し,抗GST抗体で反応させてようやく目的の位置にバンドを認めた。このイムノブロット法に比較し,SPR法は簡便であり,しかも抗原蛋白の量が著しく少量で済むという利点があった。またこのようなイオンチャネルに対する抗体の場合,抗原性はチャネル蛋白の立体構造に依存することが多く,SPR法はこの立体構造を比較的維持して抗原抗体反応を見ることが出来るため,今後抗イオンチャネル抗体測定の重要な方法になると考えられた。 (2)抗アセチルコリン受容体抗体 α-bungarotoxinを用いて測定される抗AChR抗体が陰性の重症筋無力症患者で,血清中にα-bungarotoxin結合部位に対する抗体が存在し,toxinとの競合により抗体の測定が出来ない可能性を考え,toxin結合部位の合成ペプチド(α181-200)を作成し,健常者10例,抗アセチルコリン受容体抗体陽性20例,陰性20例のIgGを用いて,SPR法で検討した。しかし,いずれのIgGも合成ペプチドとの反応は見られなかった。今回の結果からはα-bungarotoxin結合部位に対する抗体は存在しないと考えられた。
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