研究課題/領域番号 |
11877109
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経内科学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
矢持 忠徳 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80306844)
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研究分担者 |
新倉 貴子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10301491)
松田 修二 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70296721)
松岡 正明 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (70222297)
西本 育夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80180652)
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研究期間 (年度) |
1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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キーワード | アルツハイマー病 / 細胞死 / αシヌクレイン |
研究概要 |
(1)αシヌクレインはAPP誘導性細胞死抑制遺伝子候補であった APPを強発現した神経細胞株(F11/APP)に抗APP抗体を処理すると72時間でほぼ全ての細胞が死滅する。この細胞に、予め、ヒト胎児大脳cDNA発現ライブラリーを導入し抗APP抗体処理後生存した細胞からプラスミドを回収するというスクリーニングを数回繰り替えし幾つかのクローンを得た。それらをシークエンスしたところ、そのうちの一つがヒトαシヌクレイン遺伝子の全長をコードしていた。F11細胞はマウスとラットの融合細胞であり、ヒトαシヌクレインとrodentのαシヌクレインとはアミノ酸が同一ではない為、得られたヒトαシヌクレイン遺伝子はライブラリー由来であることは確定的であった。この為、αシヌクレインは、APPが誘導する細胞死を抑制する遺伝子の有力候補であると考えられた。 (2)APPが誘導する細胞死をαシヌクレインが抑制するか F11/APP細胞にαシヌクレインを一過性に発現させ抗APP抗体で細胞死を誘導したところ、対照群と同様の強い細胞死が観察された。そこで、F11/APPにαシヌクレインを安定的に発現した細胞(F11/APP/synuclein)を複数樹立した。発現量の異なる細胞株を抗APP抗体で処理したところ、αシヌクレイン発現量の多少に関係なく細胞死が強く誘導された。このことから、野性型αシヌクレインはAPPの惹起する細胞死を抑制する効果はないと結論した。 (3)他のア病原因遺伝子の誘導する細胞死をαシヌクレインが抑制するか ApoE4はア病の危険因子とされているが、F11細胞やF11/APPはApoE4の処理によりアポトーシスを起こすことが明らかとなっている。F11/APP/synucleinとF11/APPをApoE4で処理したところ、両細胞株で細胞死率の違いが認められなかった。このことから、αシヌクレインにはApoE4で誘導されるF11細胞のアポトーシスを抑制する機能はないと結論された。他の私達の検討から、プレシナリン1および2は、APPとは異なる細胞死機構を持つと考えられる為、現在これらに対するαシヌクレインの効果を検討中である。 (4)点変異がどのようにαシヌクレインの機能を変えるか A53T変異やA30T変異は家族性パーキンソン病に見い出された優性変異であり、これらの変異体は野性型αシヌクレインとは異なる機能を持つ可能性がある。これらの変異体を作成し、F11/APPへの一過性強発現系、およびF11へのAPP,PS1/2変異体との共発現系による、細胞死の変化と細胞死関連の生化学的変化(リン酸化、カスペース)について検討中である。
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