研究概要 |
初年度は,徐脈性不整脈の症例の選択を行ってきた。徐脈性不整脈の症例は,九州大学医学部附属病院の洞不全症候群や房室ブロックおよびこれらに対してベースメーカー植え込み術を施行した症例で,器質的心疾患は除外した。得られた血液検体の白血球からDNAの抽出・精製を行い、DNA変異のスクリーニングを試みている。 今年度は集められたDNAサンプルからの遺伝子変異の検索と同定・解析を以下の手順で進めている。コネクシン(Cx)のCx40(1077 base),Cx43(1149 base),Cx45(1191 base)について各々4セットのプライマーを設定し,PCRにてコネクシンのフラグメントを増幅し,これをホルムアルデヒド中で熱処理し,非変性ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動,DNA-本鎖高次構造多型(SSCP)を解析する。しかし現段階で明らかなCxのmutationは得られていない。 徐脈性不整脈の症例における心臓刺激伝導系のコネクシンは遺伝子変異によって機能変化している可能性も十分にあるが、一方で遺伝子変異は起こっておらず,変異のないコネクシンが加齢とともに退行変性(正常に機能しているコネクシンの数的減少)している可能性や、生成・分解をくり返すコネクシンが細胞表面へ発現する際に興奮伝導に重要な配列・配向を維持するか(機能しているコネクシンの分布の変化)という問題も多分に含まれていると考えられた。
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