研究概要 |
1)ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)に対する単クローン抗体を用いた生検肝組織の免疫組織染色で患児肝にはHO-1が染色されなかった. 2)患児末梢血細胞およびLCL細胞株を用いてウエスタンブロッティング法を実施したところ,HO-2蛋白は対照と同等に発現がみられたが,HO-1蛋白はヘミンなどのストレス刺激後でも全く発現がみられなかった.以上より本例のHO-1欠損症の診断が確定した. 3)HO-1mRNAはRT-PCR法により,その発現が確認された. 4)患児および両親のHO-1遺伝子解析から,母親ではエクソン2の欠損,父親ではエクソン3に2塩基欠損があることがわかり,患児はその複合ヘテロ接合体であることが知れた.さらに母親アリルにはAlu-Alu関連遺伝子再構成に基づく,エクソン2を含む大きな染色体遺伝子の部分欠損が証明された. 5)正常HO-1遺伝子を含むレトロウイルスベクターの作成し,患児細胞株LCLへ遺伝子導入したところ,HO-1蛋白発現と機能の部分的正常化がみられた.ただしこのHO-1発現は恒常的で,生理的にみられるようなストレス誘導性発現ではなかった. 6)患児の2度の腎バイオプシー標本と剖検材料の免疫学的検討から,HO-1欠損症では腎尿細管に対するストレス障害が著明であることが知れた.各種腎疾患においても腎尿細管障害が著明であった. 7)正常ヒト末梢血単核細胞をフローサイトメトリーで,単球,リンパ球に画分した.細胞刺激後,HO-1mRNA発現をRT-PCRで,HO-1蛋白発現をフローサイトメトリー法でみると,単球画分でHO-1発現が強く,リンパ球では逆に弱く,細胞系特異的なHO-1発現調節機構の存在が示唆された.
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