研究概要 |
スルファメトキサゾル・トリメトプリム合剤(ST合剤)は細菌の葉酸代謝を二段階にわたって阻害することにより抗菌作用を発揮するといわれている。しかし好中球機能異常症の代表的疾患である慢性肉芽腫症での有効性の機序は、単に葉酸代謝阻害だけで説明できるものではなさそうである。今回我々diaminofluorescein-2(DAF-2)を用いて好中球中の一酸化窒素(Nitric Oxide:NO)を直接検出し、ST合剤により好中球中のNOの産生が亢進するか否かを検討した。 【対象と方法】研究目的を説明してインフォームドコンセントを得たうえで健康成人から採血した。ヘパリン加静脈血に緩衝液(PBS)を加え、リポポリサッカリド(LPS、最終濃度1μg/ml)、sulfamethoxazole(Sul、最終濃度10mg/ml,1,000μg/ml,100μg/ml)、trimethoprim(Tri、最終濃度300,30,3μg/ml)、クラリスロマイシン(最終濃度200,20,2μg/ml)、アンピシリン(333,33,3μg/ml)をそれぞれ添加、1時間培養後にDAF-2を25μM添加、さらに2時間培養し溶血処理後にflow cytometerで解析した。 【結果】LPS、Sul 1,000μg/ml、Tri33μg/mlを加えた場合、対象と比較して好中球NO産生は1.5倍に、またLPS、Sul 1mg/ml、Tri 333μg/mlでは3倍に亢進した。なおクラリスロマイシン、アンピシリンでは亢進がみられなかった。 【考察】Sul 1,000μg/ml、Tri 33μg/mlは、それぞれ有効血中濃度の10倍であり、Sul 10mg/ml,Tri 333μg/mlは同じく100倍である。ST合剤を長期に内服している場合、好中球内濃度は有効血中濃度の10倍から100倍の間にあると推定される。したがって上記の結果からST合剤は好中球のNO産生能を亢進させることが考えられる。 NOそのものに殺菌能があるか否かを現在検討中である。
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