研究概要 |
ダリエ病は,おもに脂漏,間擦部位に粟粒大の角化性小丘疹を多数生じる常染色体優性遺伝性,難治性の疾患でる。本研究の目的は,ダリエ病の培養表皮細胞システムをもちいて,動的状態における表皮細胞接着因子の微細分布状態の異常を解析することにより,本症の病因蛋白を推定することであった。既存のへミデスモゾーム、デスモゾーム構成蛋白に対する抗体の他に、最近発見された新しい分子に対するモノクローナル抗体も加えて、これら分子の発現異常が動的培養表皮細胞系においてどのように存在するのかを、検討した。ダリエ病の培養表皮細胞を培養過程で単層,2〜3層,重層の3段階に分け,それぞれの分化段階において、細胞外のみならず細胞内に存在する細胞間接着因子の微細局在の動的な異常を,共焦点レーザー顕微鏡で検索した。しかし、本研究実施期間中に、イギリスの研究グループから、ダリエ病の原因遺伝子が表皮細胞内カルシウム濃度を調節するカルシウムポンプをコードするものであることが明らかとされた。ダリエ病では,遺伝的にカルシウムポンプの機能が約半分に落ち、Heteroinsufficiencyにより、2次的に表皮細胞間接着蛋白産主の異常がおこり、desmosomeが崩壊し棘融解が生じるという我々の結果は、原因遺伝子の機能を解明するうえで重要な情報であると考えられた。
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