研究概要 |
我々は、1984年に一個の造血前駆細胞に由来する一対の娘細胞が同一の培養条件下にも、赤血球と白血球あるいは多細胞系列と単細胞系列というような不均等分化をすることを示した。(Suda T,Suda J,Ogawa M:Proc Natl Acad Sci USA 81:2520-2524,1984)。これは、造血細胞の分化は、外からの増殖因子によって指令されるものではなく、細胞自体のプログラムによって進行する事象であるとするStochastic Modelの根拠となった。一個の細胞が2個に分裂したときに、細胞分化の方向が不均等に起きたことを直接証明しようとした。 1)GATA-1転写因子が赤血球・巨核球に発現していて、白血球には発現しないことが明らかになったこと、 2)Green Fluorescence Protein(GFP)の蛍光をCCDカメラで鋭敏に捉えられるようになったことより、一対の娘細胞において、GATA-1の発現の程度を検討し、赤血球・巨核球分化と白血球分化の不均等分化を追跡した。 しかしながら、現時点では、半固形培地に存在する単細胞の蛍光強度を正確に測定することができず、娘細胞の一方にGATA-1が発現し、他方に発現しないという不均等分裂をとらえることはできなかった。また、赤血球・巨核球においてもGATA-1の発現は、一定で継続するものではないことが分かり、上記の方法論に問題が生じた。 今後、造血細胞分裂におけるRNAあるいは蛋白の不均等分配は、共焦点レーザー顕微鏡の導入によってアプローチできると考える。
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