研究概要 |
本年度は,各染色体腕特異的テロメリックプローブを用いたFISH解析(テロメリックFISH解析)において,2種類のプローブを2色の蛍光色素で同時に観察する方法(2色FISH法)を確立した. 解析の対象は,習慣流産や先天性多発奇形児出産既往のある,通常のG分染法で異常を検出しにくい染色体末端部同士の微細相互転座保因者および発端者の染色体異常患者とした.転座に関わる2種類のテロメリックプローブを用い,1種類のプローブをビオチンで,もう1種類のプローブをジゴキシゲニンで標識し,ビオチン標識したプローブはアビジン-FITCにて蛍光顕微鏡下で緑色に,ジゴキシゲニン標識したプローブは抗ジゴキシゲニン-ローダミンで赤色として検出することとした.プローブサイズの小さい方を感度の高いジゴキシゲニンにて標識し,ビオチン標識プローブとジゴキシゲニン標識プローブの混合比を7:3とした.各プローブについて抑制バイブリダイゼーションのために加えるCot-1 DNAの至適量の検討などを行い,それぞれの保因者の相互転座が確実に検出できる2色テロメリックFISH法の至適条件を設定した.テロメリックFISH解析では,染色体標本の質に関わらず,また,間期細胞核においても対象とする染色体領域の不均衡が生じていないかどうかの評価が可能であり,次子妊娠時に出生前診断を希望した家族には,胎児細胞の染色体解析としてテロメリックFISH解析を通常のG分染法と併用することによって,異常の有無を確実に診断することができた.末端部同士の微細な相互転座を有する,習慣流産や先天性多発奇形児出産の既往のある家族に対しては,従来行われていた染色体解析だけでは確実な診断が困難であり,そのために出生前診断の適応と認められない場合があったが,テロメリックF1SH解析で相互転座を同定できた家族については出生前診断が可能となることを実証した.
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