研究概要 |
Wolfram症候群は「尿崩症・インスリン依存型糖尿病・視神経萎縮・難聴」を4大症状(DIDMOAD)とする常染色体劣性の遺伝性疾患である。Wolfram遺伝子(WFS1)の遺伝子異常のホモ接合では若年型IDDM、ヘテロ接合では成人型NIDDMになるという仮説を初年度に立てた。当該年度では、2型糖尿病者に加えて気分障害患者のWolfram遺伝子のスクリーニングを継続し完了させた。 (1)Wolfram遺伝子に関する患者遺伝子のスクリーニング 2型糖尿病者と気分障害患者のWolfram遺伝子の8個のエクソンをPCR法で増幅した後直接シーケンスして変異の同定を試みた。対象の数を前年度からさらに増やして調査した結果、7種類のミスセンス変異(R456H,V503G,G576S,H611R,1720V,E737K,R756H)とアミノ酸の変化しない6種類のpolymorphismが最終的に同定された。しかし、これらの遺伝子変異と疾患発症との関連解析では、それぞれの病態において共に有意の関連が認められなかったので、ヘテロ接合が主たる遺伝素因の一つであるという当初の研究者らの仮説は否定された。 (2)マウスとヒトWolfram遺伝子産物に対する抗体の作成 本年度はマウスとヒト蛋白に対するペプチド抗体の作成に着手したが、現時点ではマウス抗体の作成にのみ成功している。上述のように、我々の申請時の仮説が否定されたので、以降に予定されていた発現実験は中止された。
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