研究概要 |
昨年までの研究により、糖尿病の発症・進展に起因する酸化ストレスの誘導に伴って、膵ラ氏島における細胞周期制御因子p21(cyclin dependent kinase Inhibitor)の発現量が増加することが示された。加えてこれがインスリン遺伝子発現低下にも関与することが示唆された。本年度はさらに多面的にβ細胞におけるp21発現誘導の影響を解析するため、p21遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイルスベクターを大量に作製し、培養β細胞株に感染させてp21遺伝子を効率よく発現させることにした。p21遺伝子を組み込んだ組換えアデノウイルスの作製にあたっては、当初は従来のCOS-TPC法(Miyake,S et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1993)を用いた。比較的低力価ながら得られたp21発現adenovirusを培養膵島細胞に感染させたところ、インスリンの生合成低下が認められ、糖尿病状態で増加するp21が2型糖尿病に伴うインスリン生合成低下に関わることが示された。さらに、より高力価なウイルスを得るべく、現在、p21遺伝子を組み込んだ組換え遺伝子アデノウイルスDNAをin vitro ligation反応により予め作製し、HEK293細胞にtransfectionして増殖させるという新しい手法(Mizuguchi,H.& Kay,M.A.:Hum.Gene Ther.1998)を試みている。
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