研究概要 |
本実験では,生後15週齢の妊娠ラットの胎仔(胎生19日目)で成長軟骨板を含んだ腓骨を摘出した後,大腿部皮下に異所性移植を行ってモデルを作製し,生後6週における手術肢の肉眼的所見,移植した腓骨の長軸成長および組織学的,免疫組織学的所見について検討した.その成長能力を検討してきた. 移植した腓骨は,生後6週時には胎内手術時の平均260%の長軸成長を認め,その成長は非手術側の75%に相当した.手術が行われた後肢には全例で下腿の成長障害がみられたが,下腿外側の手術創に瘢痕はなく,発毛障害もなかった.生後6週での移植骨をHE染色にて観察すると静止軟骨細胞層,増殖軟骨細胞層,肥大軟骨細胞層という成長軟骨板の柱状配列が保たれていた.しかし骨幹部では正常組織とは異なり,長軸方向の骨梁が消失し、骨芽細胞の不規則な集積がみられた.また,骨端軟骨の中心は石灰化し,その周囲には肥大軟骨細胞様の細胞がみられ骨端核を形成していた.しかし骨端核の出現が部分的に遅れている像がみられた.また,正常群と同様,BrdUの取り込みは増殖細胞層,骨芽細胞にみられた.また胎生19日目(胎内手術時期)のラットの腓骨の形態を観察してみると,骨幹部は肥大軟骨細胞が集積しており,成長軟骨板が出現すると考えられる近位部では増殖軟骨細胞と思われる小型の軟骨細胞が密に存在し,その周囲には多数の毛細血管が認められた. これまでの実験で、ラットの胎仔の腓骨遊離移植で骨周囲の正常な組織が全くなく,血行が完全に遮断されても,移植骨の成長軟骨板は生存し,軟骨内骨化による骨の成長能力が存在していることが示唆された.さらに部分的に骨端核の出現が遅れており,正常な骨端軟骨の分化と比較して幼若化していることが考えられた. 実験手技が煩雑であるためこれらの成長因子の解明にまでは至っていない.今後さらなる解明が必要であろう.
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