研究概要 |
われわれは平成11年度の科学研究補助費によりアクリジンオレンジ(acridine orange:AO)と放射線照射を併用した放射線力学的治療法(radiodynamic therapy:RDT)を開発し,マウス骨肉腫細胞株(MOS)を対象としたin vitroでの研究を進めた.その結果、1μg/mlのAOと1Gyの放射線照射の併用によるRDTは放射線単独照射で10Gy以上と同等の殺細胞効果を有することが判明した。また、この効果は従来我々が報告してきたAOを用いた光線力学的治療法(PDT)で得られるものとほぼ程度であることから、このRDTで得られた殺細胞効果は、放射線によりAOが励起されて生じた一重項酸素が主な役割を果たしていると考えた。さらに平成12年度の科学研究費によりin vivoでの研究を進めた.MOSをC3Hマウスの皮下に移植したin vivoの実験でもRDT(10μg/ml,5Gy)は腫瘍成長を抑制したが、腫瘍増殖を完全に抑制する事はできなかった。以上の結果からAO投与と低線量放射線照射によるRDTはヒト骨肉腫に対する新しい治療戦略の一つになる可能性があることが分かった。RDTはPDTでの励起光の透過性の問題点を克服した治療法であり、臨床応用できればその適応範囲は骨肉腫だけでなく多くの癌広がるものと考える。 今後はin vivoにおける至適条件を追究しつつ放射線照射における最大の問題点である低酸素状態のRDTの殺細胞効果への影響を検討する予定である. 以上の研究成果は44th,45th Orthopaedic Research Society、日本整形外科基礎学術集会をはじめ国内外の多数の学会で発表した。
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