研究概要 |
三叉神経痛、がん性疼痛などの治療に、100%エタノールまたはフェノールグリセリンを用いた神経破壊術が行われてきたが、その合併症としてneuropathic painの発生が問題となる。我々が提唱した、高濃度テトラカインを用いた神経ブロックでは副作用が少なく、比較的長期間の鎮痛が得られることから(Pain 79:101,1999)、今年度は、培養細胞を用いてテトラカインの神経毒性を検索するとともに、神経ブロック後の感覚閾値を測定して鎮痛作用との関連を検討した。臨床研究:手術を受けられない高齢患者を対象とし、4%テトラカインを用いて神経ブロックを行い、その鎮痛効果と感覚障害の程度、並びに末梢神経検査装置(ニューロメータ)を用いて電流知覚閾値(CPT)を測定した。神経ブロックにより激痛は消失し、効果は3ヶ月以上持続した。冷覚は一過性に低下するが、1ヶ月以内に回復した。CPTは一時的に延長するが、1ヶ月以内に健側の値に戻り、感覚の回復に一致する変化を認めた。一方、他院でアルコールブロックを受けた患者では、1年以上経過してもCPTの値は異常に遷延していた。基礎研究:テトラカインの神経組織(E7Chickembrio)初代培養系への影響を検討した。同じ個体より摘出した、網膜、背側神経核、交感神経核を24時間培養し,その後各種濃度のテトラカインに培養組織を曝露した.各神経の突起先端部(成長円錐)は濃度依存的に形態変化を来し、その変化は10分程度で完成し,一部は不可逆的であった.神経突起も結節状の部位を形成する形態変化を来した.また,長時間の暴露後には細胞体にも変化が及び,アポトーシスと思われる形態を示した.現在,アポトーシス関連酵素の生化学的解析を進めるとともに、神経の再生とアポトーシス機構を、形態学的にはTunel法を用い、生化学的にはDNAラダー解析によって検索している。
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