研究概要 |
妊娠糖尿病は妊娠女性にしか出現しないので、発症に関連する遺伝素因を同定するためには通常の遺伝学的手法は有効ではない。本研究では、発現遺伝子をEST(expressed sequence tag)化およびマイクロアレイ化して、分子遺伝学的解析の研究基盤を構築することを目指した。 (1)実験動物の膵ラ氏島遺伝子群の大量集積 前年度に作成したラット膵ラ氏島cDNAライブラリー全体から無作為に約10,000個のクローンを選別してEST化した。得られたパネルから重複しないEST群を集積し、マイクロアレイの作成に供した。マウスモデルの解析も可能にするために、同動物のライブラリー(膵ラ氏島とMIN6細胞株)も新たに構築し、発現遺伝子を同様にEST化した。 (2)ESTマイクロアレイの作成と妊娠によって発現レベルが変化する遺伝子群の解析 ラット、マウスの膵ラ氏島および細胞株から集積した上記の重複しないESTを、PCR法によりインサートを増幅し、スライドグラス上にスポットしてマイクロアレイを作成した。種々のハイブリダイゼーション反応条件を検討し、特異的に発現プロフィールが検出される至適条件の確立に成功した。当該年度は、特にラットアレイを中心に候補遺伝子検索に供した。対象となるラット膵ラ氏島組織からmRNAを抽出し、蛍光(Cy3,Cy5)標識してプローブを作成し、上記のESTマイクロアレイと反応させた。その結果、遺伝子発現レベルが変化する多数の遺伝子を検出した。データベースサーチにより、ハウスキーパーを除去した後、対応するヒト遺伝子を獲得した。高次の候補遺伝子に対してSNPマーカーを大量収集し関連解析を展開しているので、関連坐位は近く同定される。
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