研究分担者 |
渡辺 佳子 杏林大学, 医学部, 助手
川上 速人 杏林大学, 医学部, 教授 (30146542)
韮澤 融司 杏林大学, 医学部, 教授 (60129591)
伊藤 泰雄 杏林大学, 医学部, 教授 (80110881)
平野 寛 杏林大学, 医学部, 教授 (10086481)
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研究概要 |
ヒルシュスプルング病の発生には、細胞外基質である複合糖質の異常が関与するとの仮説に基づき、レクチン、特に内因性レクチンを用いて胎児腸管ならびにヒルシュスプルング病膓管における複合糖質の分布を検討することを研究目的とした。 材料は、ラット胎仔、新生児・成体ラットの腸管およびヒルシュスプルング病患者の摘出腸管とし、外因性レクチンとしてConA, DSA, MPA, RCA-1, PSA, PHA-L, LCA, WGA, PNA、SBA, UEA-1, DBA, GS-1, VVA, BPA, MAAを、内因性レクチンとしてガレクチン1を使用した。 <結果>1)ラット腸管:アウエルバッハ神経叢におけるレクチンの反応パターンは、胎生17〜19日に反応増強を示し、以後同じ反応が持続するもの(ConA, DSA, MPA, RCA-1)、胎生15日から陽性反応があり、成体まで持続するもの(PSA, PHA-L, LCA, WGA)、全経過を通じ全く反応しないもの(上記以外のレクチン)の3タイプに分けられた。ガレクチン1では胎生早期には染色されなかったが、胎生17日以降では染色性にむらがあり一定の反応パターンは得られなかった。2)ヒルシュスプルング病腸管:正常部腸管では、成体ラット同様ConA, DSA, RCA-1, WGAのいずれもが粘膜上皮、平滑筋層ならびにアウエルバッハ神経叢に強陽牲反応(++)を示した。一方これらのレクチンは無神経節腸管の粘膜上皮でも同様に強陽性反応(++)を示したが、平滑筋細胞層では、DSA, RCA-1が中等度陽性(+)と反応性が明らかに減弱していた。ガレクチン1に関しては染色性が弱く、正常部と無神経節部で反応に明らかな差を認めなかった。 <結論>アウエルバッハ神経叢の分化が明らかとなる胎生17〜19日に一致してN-グルコシド型糖鎖構造が、神経叢とその周囲に増強することが示された。ヒルシュスプルング病腸管の平滑筋層でDSA, RCA-1の反応性の低下がみられ、アウエルバッハ神経叢の発生段階で、N-グルコシド型糖鎖を持つ複合糖質の異常が示唆された。腸管におけるガレクチン1の染色性は弱く、反応性に一定のパターンを見いだすことはできなかった。
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