研究概要 |
BMPにより異所的に誘導される骨組織の主たる形成機構は,生理的な膜性骨化ならびに内軟骨性骨化とは異なり,これは第三の骨化様式に位置づけられる類軟骨性骨化であることを報告した.そこで今回,この類軟骨性骨化の初期に発現・増殖する軟骨細胞の性格を明らかにする目的で,TGF-β1ペプチドとそのmRNAの発現状況を組織化学的に検出した.4週齢のddY雄性マウスの大腿部筋膜下組織内にゼラチンカプセルに容れた部分精製段階のBMP約5mgを埋入した.1週経過後摘出した同部組織を10%中性緩衝ホルマリンで24時間固定後,通法に従いパラフィン・包埋切片とした.HE染色により軟骨細胞の増殖を確認し,抗TGF-β_1抗体(#1110-W-R,キング醸造)を用いて,DakoのLSABキット#K680(ダコ・ジャパン)によって免疫組織化学的に検討した.mRNAの検出(ISH)は,合成ヒトTGF-β_1遺伝子BBG-24(370塩基対,BBL)基に作成したRNAプローブを使いハイブリダイズ後,ベーリンガー・マンハイムの検出キットを用いて行った.TGF-β_1ペプチドの発現について,免疫組織化学的に検索すると,異所性骨誘導の初期に出現・増殖する軟骨細胞には,TGF-β_1の強い陽性反応が観察された.その反応は増殖した純胞によってかなりばらつきがあり,強陽性に反応するものから,弱陽性を呈するもの,さらにはほとんど陰性のものなど極めて多彩であった.これをISHにてそのmRNAを検出すると,その分布は組織化学的に確認したペプチドのそれと一致しいた.従いTGF-β_1はその遺伝子発現の結果によって合成されたものと確認され,BMPが誘導した異所性骨形成の初期にTGF-β_1は異所性の類軟骨性骨化に出現する「類軟骨形成細胞」の細胞分化に深く関与していることが推察された
|