歯周病は、複数種の細菌が共存して病原性を発揮する"混合感染症"である。本研究では歯垢細菌叢生態系のモデルとして、歯周病に関連する細菌と歯周病とはあまり関係ないといわれている細菌を混合し、ホスト由来の蛋白質などと共にインキュベートし、細菌間の共生や競合の様相(蛋白質の利用のされかたや病原因子の変化など)を検討し、そのメカニズムを解明することを目的とした。 1.単独で嫌気的に培養したPorphyromonas gingivalis(Pg)とStreptococcus sanguinis(Ss)を混合し、細菌混合懸濁液を調整した。これにホスト由来の蛋白質としてアルブミン、あるいはアルブミンとグルコースを加えて、嫌気条件、pH7でインキュベートした。アルブミン単独添加ではアルブミンが経時的に分解されたのが、アルブミンとグルコースを添加したものではアルブミンの分解はほとんど起こらなかった。アルブミンとグルコースを添加したものではSsによる糖発酵のためpHが低下しており、このpH低下がPgのプロテアーゼを阻害したためと推測された。 2.単独で嫌気的に培養したPgとFusobacterium nucleatum(Fn)を混合し、細菌混合懸濁液を調整した。これにアルブミンとグルタミン酸を加えて、pH7およびpH5で嫌気的にインキュベートした。pH7ではアルブミンが経時的に分解された。一方、pH5ではインキュベートの初期にはほとんど分解されなかったが、時間とともにpHが上昇し、やがてアルブミンの分解が始まった。これはFnのアミノ酸(グルタミン酸)代謝によってpHが上昇し、Pgのプロテアーゼの阻害を解除したためと推測された。 以上のことから、複数の菌を混合することにより、細菌間の相互作用が明らかになってきた。しかし、本研究計画が採択されてから日が浅く(平成11年11月追加採択)、現在、本研究を強力に推進中である。
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