研究概要 |
【研究目的・方法】 われわれはラット三叉神経運動ニューロンにおいて、脱分極性スパイク後電位の形成に関与するP型Ca^<2+>チャネルは樹状突起に存在し、過分極性スパイク後電位の形成に関与するN型Ca^<2+>チャネルは、細胞体に分布する可能性を示してきた。そこで本研究は、ラット脳幹スライス標本を用いてノマルスキー微分干渉顕微鏡観察下で、三叉神経運動ニューロンの細胞体と樹状突起から同時に2つのパッチクランプ記録を行う実験系の開発を行い、これらの部位の電位や膜電流を同時に記録・解析することで、三叉神経運動ニューロンの細胞体と樹状突起に分布するCa^<2+>チャネルのサブタイプおよび各サブタイプが関与する電気現象を直接的に調べることを目的とする。平成11年度は、細胞体のカルシウム電流を解析し、以下のことが明らかになった。なお補助金は、パッチ電極のより正確なコントロールに役立つ画像処理装置の購入および実験動物代等の消耗品代に使用した。 【研究成果】 1. 新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンにおいて、閾値が約-65mVで不活性化の速いLVA Ca^<2+>電流と、閾値が-40mV前後でピーク電流が大きくLVA Ca^<2+>電流に比べて不活性化の遅いHVA Ca^<2+>電流が認められた。 2. LVA Ca^<2+>電流の不活性化は膜電位依存性を示した。(V_<1/2>=-71mV). 3. セロトニン(20mM)を投与するとLVA Ca^<2+>電流の活性化の閾値が過分極方向に変化し、ピーク電流が増大したのに対して、HVA Ca^<2+>電流は抑制された. 以上の結果から、新生仔ラット三叉神経運動ニューロンには,LVAおよびHVA Ca^<2+>チャネルが存在し,ニューロンのスパイク発射パタンに影響を与えていると考えられる.またセロトニンは,これらのチャネルの活性を変化させ,咀嚼筋の筋緊張に影響を与えている可能性が示唆された.
|