研究概要 |
休止期や分裂増殖の遅い細胞へも高い効率で遺伝子導入が可能であり,in vivo遺伝子導入が容易な,アデノウイルスベクター法を用い,アデノウイルスベクターに骨形成能が高いCTGF, TGF-βの遺伝子を組み込む方法を用い,続いて,ラット脛骨にアデノウイルスベクターを投与し,周囲組織(骨芽細胞,間葉系細胞)に感染,遺伝子導入させることで,持続的にそれらの遺伝子を発現させ,早期osseointegrationの獲得を試みることを目的とした実験を行ってきた。 前年度において,アテロコラーゲンとウイルスベクターの複合化と,複合化したウイルスベクターのin vivo LacZ遺伝子導入を行った。しかし導入効率が低く他のキャリアを用いた実験系が必要であると考えられた。そこで本年度はポリ乳酸や他の高分子生体材料をキャリアとして用いウイルスベクターと複合化を行いin vivo実験を行った。 1.ポリ乳酸とウイルスベクターの複合化 ポリ乳酸とウイルスベクター液を混ぜ凍結乾燥を行い,複合化させることに成功した。 2.複合化したウイルスベクターのin vivo LacZ遺伝子導入 ラット脛骨内に1で作製したLacZ遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを注入し,経時的にラットを屠殺し,脛骨におけるLacZ遺伝子発現をX-gal染色にて観察したところ,ポリ乳酸を用いても導入効率の上昇にはつながらなかった。 3.ウイルスベクターの他臓器への感染の有無 2のラット屠殺時,固定直前に気管,肝臓,膵臓,腎臓,骨格筋を摘出し,total RNAを抽出し,LacZに対するprimerを用い,RT-PCRを行ったところ,他臓器にLacZ遺伝子の発現は認められなかったことから,ウイルスベクターの他臓器への影響がないことが確認できた。
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