研究概要 |
1.研究目的 生体は、全て元素から構成されている。元素の体内摂取は、主に食物や飲料水などから経口的に行われている。また、口腔内には、金属補綴修復物などの歯科用合金が多く存在するために、口腔粘膜は種々の元素と直接にあるいは唾液を介して長期間にわたり接触している。口腔粘膜疾患のなかには、これらの元素がその一原因と考えられているものもある。しかし、現在まで口腔粘膜における微量元素分析についての報告はなかった。そこで本研究は、疾患群の解析に先立ち、健常粘膜における各元素の標準値を作成することを目的とした。 2.対象および方法 対象は、口腔健常粘膜100例であり、男性48例(12-77歳平均32.5歳)、女性52例(11-76歳平均30.7歳)であった。 採取した頬粘膜は、生理食塩水中で撹拌・洗浄後、40℃のホットプレート上で乾燥した。乾燥試料の重量を5mgに調整後、内部標準元素としてInを用いた硝酸灰化法にて液体試料の作製を行った。液体試料5μlを薄膜に滴下・乾燥後、元素の定性・定量を医療用小型サイクロトロンを用いた粒子励起X線分光法(PIXE法)にて行った。 3.結果 口腔健常粘膜について分析した結果、39種類の元素が検出された。これらの元素を性別、年代別、金属補綴修復物装着の有無などについて比較検討したところ、Se,Pb,Cr,S,Cu,Hgにおいて有意差がみられた。 現在、唾液、血清、骨膜、口腔扁平苔癬患者の口腔粘膜などの元素分析も行っており、これらと健常粘膜から得られた値(標準値)との比較検討を予定している。
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