研究概要 |
水とn-プロパノールの混合溶媒からα-シクロ(2,3-エポキシマンニン)の結晶化を行い,X線構造解析に成功した.n-プロパノールがα-シクロ(2,3-エポキシマンニン)の空洞に包接され,その水酸基が空洞の親水性部位(6-OH側)に,そのn-プロピル基が空洞内部に位置していた.この構造は,昨年報告したエタノールとの包接錯体とは正反対のものである.即ち,後者の場合は,空洞に包摂されたエタノールは,その水酸基を空洞の疎水性部位(エポキシ側)に位置し,包接錯体が二量体となってエタノール水酸基同士の水素結形成を可能にしている.この構造上の相異は,アルコールのメチレン基一個の有無によってもたらされるものであり,空洞がそれを精密に認識できることを意味する. β-CDの構成単位糖であるグルコース1個をアルトロースに変換したaltro-β-CDがゲスト分子をその空洞に取り込むとき,空洞形を変化させることを発見した.即ち,altro-β-CDはH-NMRの解析から1Cと^oS_2コンホーマーがほぼ2/1の比率で速い平衡状態にあるものと推定されたが,これがアダマンタンカルボン酸ナトリウムを取り込むと主に^oS_2コンホメーションをとるようになった.球状のアダマンタン部分を取り込むためにこのようなコンホメーション変化が誘起されたものである.これはホストの基質誘起コンホメーション変化を設計できることを示唆する点で興味深い.さらに,altro-β-CDが平板な形状をしたゲスト分子をその空洞に取り込むとき,アルトロース部分が1Cコンホメーションを取り空洞の形をゲスト分子に合わせる結果,ゲスト分子の自由回転が著しく阻害されることを発見した. またCDの構成単位グルコース複数個を位置特定的にマンノースあるいはアルトロースに高収率で変換し,変形環構造を持つ新規環状オリゴ糖を合成した.
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