研究概要 |
ニンジン培養細胞の二次代謝活性発現のための細胞内情報伝達機構のうち、二次メッセンジャーレベルの上昇に寄与するGTP結合タンパク質を検出しその生化学的諸性質を明らかにすることを目的とした。オリゴガラクツロナイド処理して二次代謝活性の誘導を行ったニンジン細胞からミクロゾームフラクションを調製し、SDS-PAGEによってタンパクを分離した。これをニトロセルロース膜に転写した後放射標識したGTPとインキュベートし、GTPに親和性を示すタンパクをバイオイメージングアナライザーで解析した。その結果、分子量約38kDaの位置にGTP結合活性を示すタンパクが検出された。次いで、転写タンパクをGTP結合タンパクに対する抗体で処理し、標識した二次抗体の酵素反応によって発色させ親和性を確認した。様々な一次抗体との反応性を検討したところ、二次代謝活性誘導に特異的と思われるGタンパクは抗GαsおよびGαolfに対して親和性を示すものの、GiやGoなど他のクラスの三量体Gαサブユニット抗体とは交差反応しなかった。またRacやRasといった単量体Gタンパク抗体との反応も認められなかった。これらの実験結果から、ニンジン培養細胞に二次代謝活性を誘導するGTP結合タンパク質はα,β,γのサブユニットからなるヘテロトリマー型のものであって、そのαサブユニットの分子量は約38kDaであると推測される。次に、このGαs、Gαolfに類似したGタンパクについて遺伝子レベルでの情報を得るために、現在までに報告されている当該タンパクの構造を参考にしてプライマーを設計しPCR法による遺伝子断片の検出を試みた。様々なプライマーのうち期待した200塩基相当の断片を特異的に増幅する組み合わせが見出された事から、現在、これを放射標識してプローブとしノーザーンブロット法による解析を行い、二次代謝活性誘導に特異的なGタンパクをコードした遺伝子であることの証明を試みている。
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