研究概要 |
我々はアンギオテンシノーゲン遺伝子変異が本態性高血圧と関連することを示した。またアンギオテンシノーゲンの量的変化が血圧と密接に関連することも示している。アンギオテンシノーゲン(AGT)の量的変化が血圧にどのような機序で、かつどの臓器で影響をおよぼすかを動物モデルで解析する。実験に使用するマウスは米国North Carolina大学のSmithies教授のグループにより作成されたものである。マウスAGT遺伝子を破壊したマウス、かつ正常の染色体部位にAGT遺伝子を2個重複して挿入したマウスである。Gene Dose Effectを解析することができるモデルマウスとして確立されている。すなわち、交配により、0コピー、1コピー、2コピー、3コピーそして4コピーとアンギオテンシノーゲン量を変化させることができる。これらのマウスはAGTコピー数以外の遺伝背景がほぼ同一である。 各々を交配させることにより、AGT遺伝子を各1,2,3,4個有するマウスを得る。各マウス作成の確認は,PCR法、サザーンブロット法を用いた遺伝子タイピングによって行なった。そして血圧測定、血中アンギオテンシノーゲン、アンギオテンシンペプチド測定など基本データを収集する。血圧測定は侵襲の少ないTail-cuff法でおこなう。マウス血圧測定に関しては、BP-98A,Softronを用い、1匹あたり30分間測定した(安定するまでの時間も含む)。本態性高血圧症の重要な外来因子として塩分摂取はよく知られている。4種の異なる遺伝型をもつマウスに高Na飼料(Na=2%)、普通Na飼料(Na=0.26%)を摂取させ、血圧の変化と血中AGTのレベルを測定する。これらのマウスはもともとAGT発現量に差があるので、塩分摂取によりAGTがさらにどのように変化するか、かつ血圧変化との関連性の解析を試みた。現在のところ、この食餌条件ではマウスの血圧に影響をすことはなかった。おそらくマウスは血圧上昇に関して耐性があるためと示唆される。しかしながら、血圧の変化はなくても近位尿細管での遺伝子発現には変化があることが予測でき、これらがヒト高血圧の候補遺伝子と考えられる。現在DNA arrayシステムにて包括的遺伝子発現変化を測定しているところである。
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