研究概要 |
1.酸化的ストレスによるAR遺伝子発現誘導のシグナル伝達経路 ラット血管平滑筋細胞株A7r5において認められたH_2O_2によるAR mRNAの発現上昇は,EGF receptor kinaseの選択的阻害剤tyrphostin AG1478によって抑制された.H_2O_2はMAP kinase ERKを活性化するがERKのkinaseであるMEKの阻害剤PD98059によってARの発現上昇は有意に抑制された.AG1478はH_2O_2によるERKの活性化を阻害し,またEGF単独或いはEGF受容体に作用するox LDLによってもARの発現誘導が認められたことから,酸化的ストレスによるAR遺伝子活性化には主にEGF受容体-ERKを介する経路が関与することが示された. 2.糖尿病マウス心臓での遺伝子発現 実験的糖尿病を誘発したBDF-1マウス心筋における遺伝子発現の動態をcDNA macroarrayを用いて解析した結果,3週目よりaldose reductase(AR)とfetal myosin alkali light chain mRNAsの発現低下と血漿型glutathione peroxidaseの発現上昇を検出した.そこでNorthern blotにより各分子種の発現変化とインスリン投与による抑制効果を確認した.次にARの発現変化につきWestern blotとDot blotにより検討し,約50%のmRNAの減少に対してAR蛋白の発現は有意な変化を示さないことを見出した.高血糖に伴う酸化的ストレスの亢進により心筋ARの発現が上昇するとの予測に反し,今回の検討ではAR mRNAの発現は減少するも蛋白量は変化せず,AR蛋白turn overの低下が示唆された.
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