研究概要 |
運動が、遺伝子を傷害する可能性について、1)ミトコンドリアDNAの変異出現頻度、2)DNA傷害の代謝マーカーから検討した。核蛋白質の保護がないミトコンドリア遺伝子はストレスにより傷害を受けやすいことが知られており、その変異は運動に伴う代謝昂進時の酸化ストレスによっても生じる可能性が考えられていた。本研究では、27名の長距離競技選手と30名の対象群のミトコンドリアDNAのDループ領域の塩基配列をdirect sequence法で解析した。1122塩基からなるDループ領域をAndersonらにより報告されている欧米人の標準配列(Nature 290 : 457-470, 1981)と比較すると競技者では13.2±3.2、対照群では13.8±3.3の違いが認められた。更に、今回の全被検者において最も多く認められた配列を標準として比較した場合にも競技者では9.3±4.8、対照群では9.9±4.4の違いが認めれ、両群間には有意な差は認められなかった。デオキシ・グアノシンは酸化的ストレスにより傷害されるとその修復過程において8-ハイドロキシ・デオキシ・グアノシン(8-OH-dG)となり尿中に排泄される。本研究においてはレジスタンス運動初心者が高強度運動を行った際の血中8-OH-dG濃度および尿中8-OH-dG排泄量を測定し、運動がヒト遺伝子の傷害を引き起こしているか否かを検討した。健康な男性非鍛錬者10名がレジスタンス運動(マシーンを用いる8種目のウエイトトレーニング運動で最大挙上重量)を行った前後の血中および尿中8-OH-dGには統計学的に有意な変化は認められなかった。
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