研究概要 |
文化財や考古学的試料の研究に,理化学的アプローチがこれまで多くの重要な知見を与えてきたことは周知のことであり,さらに多面的な新手法の導入も,今後の発展には必要である。本研究では,文化財や考古学資料を対象としたパイ中間子やミュー粒子ビームによる新しい(試料内部の)非破壊元素分析法を提案し,その方法論確立を目的として、そのための基礎研究を行っている。具体的研究項目は以下のように考えている。 1. 基礎データの整備 2. ビームの飛程による元素の深さ分布測定法の検討 3.方法論の検討と解析ソフトウェアーの開発 本研究の実験部分は高エネルギー加速器研究機構(KEK)で申請者が中心となり既に進めている共同利用研究(πAX)の一環として行い,具体的な文化財や考古学的資料への適応に関しては研究分担者が所属する名古屋大学年代測定資料研究センターの協力の下,主に大阪大学大学院理学研究科で進めている。現在までに、1.及び3.についてある程度研究を進め、文化財の分析に特に重要となる元素を中心に,パイオニックX線の収率やエックス線強度パターンと分子構造の相関の観点から既存データの整理がなされ、解析法もほぼ整備された。ただ、KEKのビームタイムの関係で、2.については検討を進めているのみで、実験は計画中である。本方法論が完成すれば、特に、重要試料(文化財資料等)の内部組成分析が非破壊で可能となり、関連分野に有用な情報を与えることになる。
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