研究概要 |
研究最終年度にあたる本年度は,昨年度より検討してきた分散オブジェクト環境であるCORBA(Common Object Request Broker Architecture)のオブジェクト間通信プロトコル処理に加えて,その上位層にあたるアプリケーションインタフェースのデータ駆動型実現法,およびメディア処理・変換のデータ駆動型実現法について,以下のような検討を加えた. (分散オブジェクト環境におけるアプリケーションインタフェースのデータ駆動型実現法) 実行時のオーバヘッドなしに,オブジェクトの追加・削除が行えるデータ構造を採用するとともに,オブジェクト・メソッドの探査を同時並行に処理できる処理構造で実現した.本実現法では,データ駆動プロセッサの持つ,相互干渉のない多重処理性を活用して,実行時のオーバヘッドを極小化すれば,多重処理時でもターンアラウンドタイムが最短に維持できることを実験的検討により示した. (メディア処理のデータ駆動型実現法) メディア処理において,ジッタや遅延などの時間制約に最も厳しい音声通信に注目し,VoIP(Voice over IP)をデータ駆動プロセッサ上に実現した.本実現法では,同時に動画像処理を行うことを想定したマルチメディアの多重処理時においても,データ駆動プロセッサの持つ,相互干渉のない多重処理性を活用すれば,音声通信に要求される実時間性の維持が可能である見通しを得た. (メディア変換のデータ駆動型実現法) 時間制約の最も厳しい音声から,蓄積メディアとして最も需要のあると考えられる文字への変換処理のデータ駆動型実現法を検討した.本実現法では,実時間性の維持に最も影響を与える処理部において,処理のパイプライン並列化を徹底し,実行時のオーバヘッドを極小化すれば,入力に擾乱を与えずに出力可能な実時間超多重処理が実現できることをデータ駆動プロセッサシステムによる実験的検討より明らかにした. これらの検討より,実行時のオーバヘッドを極小化すれば,実時間超多重処理が実現可能である見通しを得た.
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