研究概要 |
第2年次は,申請者がこれまでに確立した,線形論理に基づいた(有限状態)実時間並行システム仕様・検証の形式的体系に対する,証明のPSPACE決定可能性と(表示的意味論に対する)完全性という二つの定理を用いて,論理的手法による実時間システムの開発ツールを実装した.われわれのツールは次の特徴を持つ. 1.その第1は,ひとつの実時間システム全体の設計に伴う,システマティックな論理的形式仕様および,われわれの(PSPACE)決定手続きを用いた安全性・信頼性の自動検証が可能である.これは,これまでに得られた上記二つの論理的基本定理を用いることにより直接遂行できた. 2.その第2は,すでに与えられている実時間システムに新たな部分を加えたり,ある部分を変更したりするときに必要となる形式検証の問題や,二つの独立に作られた(安全性がそれぞれに対して保証されている)実時間システムを統合・総合しようとするときに必要となる形式検証の問題である.われわれの論理的な仕様・検証の枠組みは,もともと高度のモジュラー性を有しているので,このような問題に対しても本質的に上記1の方法論を応用することができた. 3.その第3は,一部に危険な状態が生じ得ることが分かっている実時間システムのなかで,ある具体的なプラン(プロセスのスケジュール)が安全であるかどうかをわれわれの論理的推論体系を用いて分析する手法の開発である.論理推論体系を(通常,定理自動証明の分野で行われているように)ボトムアップ的に用いると,論理的に証明できない命題に対しては,その反例がシステマティックに生成される.この論理推論体系の持つ基本的なメカニズムを危険な状態を示す命題に対して適用すると,その反例となるプロセススケジュール(プラン),即ち安全なプロセススケジュール(プラン)の具体例が自動的に生成・枚挙される.この手法を用いて,与えられた実時間システム内での種々のスケジューリングの問題の論理的な方法論が適用できることとなった.このようなことは,これまでの伝統的なモデルチェッキングの手法では不可能なことであった.
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