研究概要 |
本研究では,リハーサルでも目的地までの事前の経路学習を取り上げて,教示法が街路ナビゲーションにおいて実際の歩行にどのような影響を与えるか検討した. 経路について,ビデオ,地図,文章,VRウォークスルー2種のリハーサルを行った後,実際の経路を歩かせる行動実験を行った.その結果,ビデオ・リハーサルはすべてのルートで高い正解率を示した.地図リハーサルは,ルート形状や交差点形状などの空間的な情報が把握できるために均質な空間で効果があった.文書リハーサルは与えられる情報が最も少なく,リハーサルの際に与えられていない他の情報についての変化があると,誤りを発生することが多かった.ウォークスルーリハーサルは,転換点の多くにランドマークが存在するルートの場合に良い結果が得られ,均質な空間では交差点の数が大きな情報源となるため誤りが多かった. 次に,提示する情報内容とナビゲーションの関係を明らかにするため,内容の異なるVRウォークスルーリハーサル3種を新たに作成して実験を行った.その結果,ランドマークの多いリハーサルではルートマップ型の認知地図にとどまる場合が多いが,このルート・マップ型の認知地図は目的地にたどり着くためには最も効果的であった.一方,鳥瞰図的な視点を持つリハーサルではサーベイマップ型の認知地図が形成され易く,空間構造の把握が進んでいることから距離定位や方向定位で良好な結果が得られた. また経路の記憶方法は男女によって異なる傾向があり,一般的に述べられているように男性は方角や距離を理解しようとするユークリッド的な方略を採用する傾向があり,女性はランドマークを記憶しようとする傾向があった.
|