研究概要 |
1.本研究では,電子・陽電子プラズマにおいて共鳴・カットオフが共存する系に対して,共鳴・カットオフ間の波のエバネッセント領域を横切って通過する波のトンネル伝播についてシミュレーション解析を行った。 2.磁力線に沿った電磁波動の1次元伝播に対しては,アルヴェン波と短波長領域で電磁波に移行するハイブリッドモードの二つのブランチがあり,そのブランチ間に波が伝播できないエバネッセント領域がある。これらのモードを記述する1次元流体方程式系は,冷たいプラズマ近似の下では,方程式の対称性から一流体方程式の系に帰着できることが分かった。 3.アルヴェン波からハイブリッドモードへのトンネル伝播についての波の透過係数をシミュレーションにより調べた。プラズマの不均一性が波の波長に比して十分緩やかであるようなプラズマに対して,波の透過係数を透過波及び入射波のエネルギーフラックスの比を用いて定義した。 4.共鳴・カットオフ間の距離をΔとしたとき,aを定数として,透過係数TはT=exp(-aΔ)と表現できて,透過率は共鳴・カットオフ間距離に対して指数関数的に減少することが分かった。この数値計算結果はBuddenの理論と定性的に一致している。また比例係数aもBuddenの理論値に近い値が数値的に得られているが,この値はプラズマの不均一性の大きさに弱く依存しているようである。 5.アルヴェン波短パルスの伝播の場合,波の振幅が段々大きくなっていくと,共鳴・カットオフ領域近くで波のsteepeningが起こるようになる。このため,ある時間でwave breakingが起こり,数値計算が破綻することが分かった。これはパルスを構成する成分の中で短波長成分ほど透過率が悪くなるので,短波長成分が共鳴・カットオフ領域近くに集中して,波のsteepeningが起こると想像される。
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