研究概要 |
細胞膜に存在するイオン輸送蛋白質や種々の刺激受容蛋白質の機能には、それらの細胞膜上の特定の部位への局在化や、細胞内骨格との相互作用が関与する事が、次第に明らかにされつつある。しかし、局在化を可能とする細胞膜への、あるいは細胞膜上での蛋白質の移動の分子機構については、ほとんど明らかになっていない。本研究では、高等真核生物の膜に存在するNa+/H+交換輸送蛋白質に注目し、本輸送蛋白質の細胞質ドメインに結合する3種の新しい蛋白質遺伝子をクローン化した。この内の一種は、Ca2+を結合し、また、Na+/H+交換輸送たんぱく質に直接結合し既知のカルシニューリンに相同性がある(CHPと呼ぶ)。また、このCHPに結合する蛋白質を検索したところ、既知のキネシンと全く同じ配列と有しさらにそのなかに新規の配列をもつモーター蛋白質の遺伝子(新規キネシン,KIF1α)と、アポトーシス関連蛋白キナーゼドメインと相同な配列を有する新規遺伝子(Cbk,とよぶ)の2種のクローンをえた。これら蛋白質の細胞膜上への局在化への関与を明らかにする目的で,それぞれを大腸菌で大量発現させ精製後ウサギに免役し抗体を作成した。また、それぞれにGFP(green fluorescence protein)との融合蛋白質を作成し細胞に導入した。このようなアプローチから、新規キネシンが脳内で発現が高いこと、CbkとCHPは、細胞核および粗面小胞体領域に存在し、細胞の増殖条件によって核や細胞膜へ一部が移動することが明らかとなった。また、これらの蛋白質を大量に生産、精製し試験管内での機能発現を観察する実験系の基盤造りにも成功している。これらの成果を、日本生化学会や分子生物学会の年会で報告し、論文を投稿中である。
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