研究概要 |
成長円錐は神経回路形成期に軸索の先端に形成され、活発な運動性と正確な分子認識に基いて、シナプス形成を担う。われわれは軸索ガイダンス機構をさらに精密に解析するために,成長円錐の軸索ガイダンス分子の挙動を可視化する実験系を構築すべく、以下の実験を行った。この系に関与する抑制性の受容体およびリガンドの組み合わせに着目し、ephrin-Eph receptorの系を選んだ。次いで、この系がSNARE複合体の会合を変化させるかどうかを、HEK293細胞発現系と成長円錐を共存させ、その後、蛋白複合体を大きさによって分離する方法で解析した。その結果、蛋白複合体は解離する方向に移動する可能性が示唆された。この事はわれわれの作業仮説である「軸索の成長・退縮は成長円錐のSNARE複合体の会合・解雇に対応する」という考えが正しいことが証明されたものと考えられる。さらに開口放出を促進するクモ毒素ラトロキシンで成長円錐を刺激すると糸状足の急速な退縮が可視化された。詳細にこの現象を解析すると、成長円錐の糸状足は先端の接着性が減少して、張力を維持できなくなる事によって退縮すること、シュワン細胞のように容受体を待たない細胞は全く形態変化が無いこと、などから成長円錐の形態変化はラトロトキシン受容体を介して、軸索ガイダンスの情報伝達系をもとに生じることが分かった。この結果は、ラトロトキシン受容体が発生期には軸索ガイダンス分子の受容体として存在していることを強く示唆する。
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