研究概要 |
我々は代謝調節型グルタミン酸受容体2型(mGluR2)のプロモーター領域にヒトインターロイキン受容体2型のα鎖(hlL2a)とクラゲ由来の緑色蛍光蛋白(GFP)の遺伝子を連結したトランスジーンを作製し,これを導入したトランスジェニックマウスを作製した.本来mGluR2を発現している神経細胞のみこのプロモーターが働きトランスジーンが発現する.このマウスを用いて以下の結果を得た. 1.線条体コリン作働性インターニューロンでのトランスジーンの発現を確認した. 2.脳実質内へのイムノトキシン投与方法を確立した.80%以上のコリン作働性インターニューロンが破壊され非特異的な破壊は10%以下に抑えられていた. 3.コリン作働性インターニューロン破壊後の中型有棘細胞でのenkephalin・substance PのmRNA発現の変化をin situ ハイブリダイゼーションを用いて定量した.破壊後にenkephalinのmRNA発現は減少し,substancePのmRNA発現は増加した. 4.コリン作働性インターニューロン破壊後のマウスの行動の変化について.一側の線条体のコリン作働性インターニューロンを破壊すると,反対側への回転運動が見られた.以上の結果から破壊後の急性期には線条体黒質路が活性化され,線条体淡蒼球路が抑制されていることが明らかとなった. 5.線条体ドーパミン受容体の変化について.破壊後慢性期にはmRNAや行動の変化は消失したが,線条体ではドーパミン受容体の発現量が減少しており,代償機構の一つと考えられた.
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