本研究の目的は、薬物と高分子との複合体の調整法に金属配位結合を利用し、これまでの化学結合法に代わる新しい薬物のDDS化技術を創製することである。そのためにまず、金属キレート残基をもつ水溶性高分子を作製した。用いた水溶性高分子はデキストランであり、これに金属キレート残基としてジエチレントリアミンペンタ酢酸を導入した。電気伝導度測定により金属キレート残基のデキストランへの導入率を評価したところ、反応条件によって導入率を変化できることがわかった。複合化させる薬物としてインターフェロン(IFN)を取り上げ、IFNを金属キレート残基を持つデキストランと金属イオンとともに混合した。液体クロマトグラフィ装置を用いて、混合前後におけるIFN分子量を調べたところ、金属イオンとして亜鉛イオンを用い、3種類を同時に混合した場合においてのみ、分子量の変化が認められた。放射性同位体で標識した亜鉛イオン、IFN、およびデキストラン複合体の体内動態を調べた。複合体化によってIFNの体内動態は変化し、期待通り、金属配位結合を利用し、混同するだけで高分子と薬物との複合体が創製でき、薬物の体内動態を修飾できることがわかった。
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