研究概要 |
近年、内分泌撹乱化学物質に対して生物学的、医学的見地からのみならず社会的にも大きな関心がよせられ、種々の試料よりの、検出、定量が必要とされている。測定法としてはgaschromatography/mass spectrometry(GC/MS)が主体であり、数段階の前処理と高額の機器を必要とするため、測定可能な検体数の制限が大きい。このため、特殊な実験区画や高額の機器を必要とせず、多検体の同時測定の可能な免疫測定法の開発について検討した。これまで、生体中のホルモンである、thyroxineやestrogenについては、monoiodothyroxine,diiodothyroxine,triiodothyroxine,tetraiodothyroxineのようにヨードー原子の違いやestron,estradiol,estriolのように水素一原子の違いを認識する抗体が開発されており、estradiolについては無抽出で生体試料中のホルモンをpMレベルで検出する免疫測定法が開発されている。更に、超高感度免疫測定法では理論的にはzmolレベルの抗原の測定が可能であることが報告されている(Ann Clin Biochem 19:379,1982)。従って、内分泌撹乱化学物質についても特異性の高い高力価の抗体の開発により、様々な試料からの種々の撹乱物質の測定が可能な免疫測定法の開発が可能であると考えられる。ところで、内分泌撹乱物質にはestrogenと同程度の低分子が多く、このため、抗体の作製にはキャリアプロテインが必要である。キャリアプロテインとしては、BSA、サイログロブリン、などが汎用されてきたが、哺乳動物用のアッセイ系を開発するには貝類より得られる蛋白質であり、近年、合成ペプチドの抗体作製に適することの知られているKLHが、一方、内分泌撹乱物質による雄の雌化等で知られる貝類などの試料のdirect assay法の開発にはBSAが適すると考えられる。また、最適の抗体を得るためには、撹乱物質とキャリアプロテインの結合法についても検討が必要である。現在までのところ、bisphenol Aについては、ELISAが開発されており、フェノール類を中心に開発が進展するものと考える。
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