研究概要 |
本研究は主にネパールヒマラヤ地域の低ヒマラヤと呼ばれる標高500m~2,500m地帯の山々に発生する地すべりと斜面崩壊のような斜面災害を中心に局所地形を考慮しハザード解析を行った内容である.また,地震と降雨の外的要因に対して,地形地質を中心に世界的にも例のない規模で行ったハザード解析である.対象地域は,中央ネパール低ヒマラヤ地域の約4,000平方kmであり,ネパール政府測量局が提供している1/50,000のデジタル地形図を元に地形解析を行い,最終的に対象地域における斜面災害ハザードマップの作成とその地域依存性に関する分析を行った.今後,この手法を少数パラメータを用いたネパール全低ヒマラヤ地域に対する斜面災害ハザード評価に適用することを目指している.基本研究方法としてGIS(地理情報システム)を用いた統計分析と確率評伍であるが,詳細な地形データが存在しないため,現地調査も実施し膨大な数の崩壊地マップを作成した上に,地形図と航空写真と照らし合わせその正当性を確認した.最終的に,ハザード評価の制度は85%近い結果を得られ,現在この分野で議論されている評価制度とほぼ一致するものであった.今回,斜面災害の要因となる内外的パラメータの数を最少限に減らし,岩石ジョイントにおける摩擦係数,地形を代表する斜面勾配,そして重力の影響を受ける岩石や土砂の単位体積重量を用いた。これらのパラメータは一般的なハザード評価には用いられず,本研究における始めての試みである. GIS手法を用いた斜面ハザード研究において,今様々な問題が存在する中本研究の方法は今後新たな評価法をして展開することを期待できる.特に,中大規模の地域レベルでハザードを行う際,現在まで提案されている方法には数多くの問題点がある.その一つはある地域に対して提案された方法は他地域に適用できない,または適用できてもその予測制度に問題があることである.本研究に提案されている方法はこのような問題を解決できると考えている.その理由として,斜面や土砂崩壊に関わっている基本的内部パラメータを用いて評価するからである. 以上の研究とそのベースとなっているネパール低ヒマラヤ地域における土砂災害・斜面災害に関する研究成果を数多くの国際学術雑誌または国際会議において公表している.最終的な研究成果にはやや時間がかかったため,本研究の目的であった内容を含む2編の論文はまだレビュー段階にある.
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではまったく新たなハザード評価法を試したが,今後この方法をさらに展開しネパールのようなデータがあまり整備されていない低開発地域において少数パラメータを用いたハザード評価が行えるよう進めて行きたい.帰国後,現職のトリブバン大学トリチャンドラキャンパス地質学科に戻り応用地質学の准教授として教育研究を進めていく予定である.また,本研究の評価方法は基本的にネパール低ヒマラヤ地域において適用したが,今後日本,特に四国地域の地すべり・斜面災害に対しても試していく予定である.そのため,数多くの現地調査,資料調査なども必要であり,帰国後も愛媛大学そして博士学位所得大学である香川大学と連携をしながら,斜面災害のハザード評価研究をさらに展開していきたい.
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