研究概要 |
太陽光を利用できる光触媒機能材料として, 狭いバンドギャップを有するAuriVillius相をキー物質とし, これに種々の半導体化合物並びに吸着機能材料を複合化・接合化した材料について検討した。 これまでの成果に基づきAurivillius相でn型のBi_2WO_6, p型のBiOIを組合せ, それにナノチューブ状カーボン及びグラフェン酸化物の還元体(rGO)等を用いて, Bi_2WO_6/BiOI/rGO複合体を液相沈積法で合成した。その結果, rGO含有率を増やすにつれ, UV照射下でのメチレンブルー(MB)分解が速くなり, 2mass%で最大となった。rGOによる比表面積の増加, MB分子とのπ-πコンジュゲート形成による吸着能の向上が関係していると考えた。 貴金属ナノ粒子(NMNP)は可視光を吸収し, 表面プラズモン共鳴(SPR)を生じる。このSPRによる可視光に対する光触媒能の活性向上を期待し, 様々なNMNPを用いてNMNP/cappedBiOI複合体を調製し, それらの光触媒活性を評価した。その結果, NMNP〈10nmのPd/cappedBiOI複合体が非常に高い活性を示すことが分かった。Pdナノ粒子が電子を捕捉し, charge-carrier分離を効率化したための効果と考察した。この系は今後さらなる活性向上が期待できる有望な系と言える。 天然の種々の粘土鉱物は多少なりともFeイオンを含んでいる。これを光触媒の活性向上に活用できるのではないかと考えた。Feを含む種々の粘土鉱物の中でスメクタイトを中心に粘土/Bi_2WO_6複合体を調製して検討した。その結果, 粘土中のFeイオンの一部が液相中に溶出し, 均一系触媒的にFenton類似反応を生じ, 全体として可視光に対する活性向上が確認できた。これまで, アロフェン/BiOl/Bi_2WO_6, アロフェン/eVO_4/Bi_2WO_6において同様に活性向上効果が見られたのには, この作用が付加していたと考察できる。 以上, 様々な複合体を調製し, 可視光に対する活性向上を目指した結果, Aurivillius相をキー一成分とし, p-nヘテロ接合を有する複合体に第三相を効果的に選ぶことで可視光活性を向上できた。
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