研究課題
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敗血症における重篤な臨床症状として、遷延性の血圧低下とそれにともなう多臓器不全がある。しかしながら、このような症状の進展の詳細な分子機構はいまだ十分には分かっていない。8-Nitroguanosine3', 5'-cyclic monophosphate (8-nitro-cGMP)は炎症反応にともなって生成し、親電子性を有するユニークな環状ヌクレオチドで、タンパク質のシステイン残基にcGMPを付加するタンパク質S-グアニル化という翻訳後修飾をもたらす。cGMP依存性プロテインキナーゼ(プロテインキナーゼG ; PKG)は、平滑筋の弛緩を制御するリン酸化酵素である。本研究では、PKGに対するS-グアニル化反応と、それによる酵素活性の制御機構、さらには血管弛緩反応を解析した。精製酵素標品を用いてキナーゼ活性を検討したところ、8-nitro-cGMPはPKGを強力に、かつ不可逆的に活性化した。また、organ bathによる検討から、8-nitro-cGMP処理はマウス大動脈を、不可逆的にフェニレフリンに対する血管収縮反応を減弱させた。質量分析による結果から、8-nitro-cGMPはPKGの42番目ならびにcGMP結合ドメインに存在する195番目のシステイン残基をS-グアニル化していた。PKGのS-グアニル化は、リボ多糖を投与したマウスの心臓において顕著に増加していた。以上の結果より、敗血症における8-nitro-cGMPの生成は、PKGの活性化ドメインである195番目システインのS-グアニル化を介して、PKGを遷延性かつ不可逆的に活性化し、敗血症においてみられる血圧低下に関わる可能性が示唆された。
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