研究概要 |
本研究では、内部に規則的なナノ細孔を有し、細孔の大きさに応じたゲスト分子の分離・吸看・貯蔵能、触媒作用、有機反応等の多彩な機能を示すことで注目を集めているMOFを基盤として、固体表面上に結晶配向性のMOF薄膜を構築しFETのチャネル素子として用いることを目標としている。 初年度であるH24年度は結晶配向性のMOF薄膜を構築する手法としてボトムアップ法を採用した。具体的には5,10,15,20-tetrakis (4-carboxyphenyl) porphyrin (TCPP)とCu2+イオンを用いた水熱合成からナノメートルサイズの二次元層状のMOFシートを構築し、得られたナノシートをナノサイズの構成要素(モジュール)として用いることにより、モジュールの分散液に固体基板を浸すことでモジュールを基板上に写し取り、この操作を複数回繰り返すことで固体基板上にナノサイズのモジュールが段階的に積み重なったMOFナノ薄膜を構築することに成功した。この手法は、従来のMOF薄膜の作成法と比較して、簡便に結晶配向性のMOF薄膜が得られる手法であることから非常に重要な結果であると考えられる。この結果はアメリカ化学会誌に受理された(J, Am. Chem. Soc. 2012, 134, 16524.)。また、Chemical & Engineering News (C&EN)においても紹介された。 2年目となるH25年度はMoF薄膜作製手法を用いることで、Au電極をパターニングしたsi基板上に結晶配向性のMoF薄膜を作製し、このMOF薄膜が極めて高いプロトン伝導性を示すことを見出すことに成功した。水吸着組成等温線測定、及び放射光を用いた水蒸気雰囲気下でのin-situ X線回折測定を用いることにより、この系ではMOF薄膜の表面に吸着した水分子と、表面付近におけるMOF末端に存在するカルボキシル基等の未結合部位(ダングリングボンド)の相互作用により、高いプロトン伝導性を発現していることを明らかにした(J. Am. Chem. Soc, 2013, 135, 7438.)。
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