研究課題
特別研究員奨励費
H25年度は、H24年度から引き続き、同位体大循環モデルのシミュレーション結果と観測の比較及び同位体比の時空間変動メカニズムの解明を継続した。具体的な項目は、以下の通りである。それぞれの項目で著名な科学雑誌(うち一つはNature Communications誌)に投稿し、掲載が決まっている。1. SCIAMACHYから得られた東アジアでの水蒸気同位体比時空間分布に関する研究本研究では、SCIAMACHYという人工衛星搭載型赤外線分光センサーから得られた水蒸気同位体比の東アジア域における時空間変動と東アジアモンスーンの北限について研究している。北緯35度を境に、水蒸気同位体比と気温の季節変化の相関性が逆転することを発見し、そこから現行気候における東アジアモンスーンの影響範囲を見積もりつつ、気候変動に伴う北限の変動について示唆を加えている。この結果は、Science in China Series E誌に投稿し、採択された。2. 完新世中期から後期にかけた北アメリカ大陸におけるPMA型テレコネクションパターンの変化本研究では、北アメリカ大陸における古気候プロキシデータと同位体大循環モデルによるタイムスライスシミュレーション結果を収集・解析し、完新世中期(約8000年前)と完新世後期(現代)では、完新世中期にはより負のPNAパターンが強かったことを発見した。こういった平均場の違いに加え、約200年周期のPNAパターンに類似した振動があることがわかり、それはde Vriesサイクルと呼ばれる太陽活動の周期と同調していることを指摘した。この結果は、Nature Communications誌に投稿し、採択された。3. 太平洋北アメリカパターンによる北アメリカ冬季の気候に及ぼす太陽活動の影響本研究では、太陽活動の11年周期とPNAパターンの強弱の振動との関係性について調べたものである。その結果、PNAパターンは太陽活動と気候を結びつける重要なパイプのような役割を担っていることがわかった。太陽活動が強い年には、より負のPNAパターンが大気に現れる。しかし太陽活動が弱い年には、正のPNAパターンが大気に表れるもその影響は太陽活動が強い年ほどではない。このような解析は、過去の大陸スケールの気候変化の詳細分析につながるほか、古気候データの解釈の向上に役立つと考えている。この結果はEnvironmental Research Letters誌に投稿し、採択された。
(抄録なし)
すべて 2014 2013 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
Science China Earth Sciences
巻: 57 号: 4 ページ: 813-823
10.1007/s11430-013-4687-1
Nature Communications
巻: N/A 号: 1
10.1038/ncomms4701
Environmental Research Letters
巻: 9 号: 2 ページ: 024004-024004
10.1088/1748-9326/9/2/024004
Climate Dynamics
巻: N/A 号: 2 ページ: 403-420
10.1007/s00382-012-1548-0
Journal of Geophysical Research
巻: 116 号: D19
10.1029/2011jd016035