研究概要 |
インドネシア海域は, 生物多様性が特に高いホットスポットエリアとして注目されているcoraltriangleと呼ばれるエリアにおいて中心的な位置を占める海域であるが, CO_2吸収/放出フラックス評価結果を示すGlobalMapでの大きな空白地帯の一つになっている。同海域でのCO2吸収/放出特性を支配する炭酸系動態の解明が遅れているのは, 基礎的な炭酸系観測データの蓄積が進んでいないことや, 大気―海洋相互作用過程に加えて周辺陸域からの有機物流入等のファクターが存在すること, 超多島複雑海域としての同海域の特徴がそこでの物理・化学・生物過程の定量的な評価を困難にしていること, といった問題が存在するためである。本研究では, これらの難点を乗り越えるべく, 当研究室所有の可搬型CO_2分圧計測装置等を用いて同海域ではじめてとなる本格的な炭酸系計測を行うとともに、coral triangle海域を対象に開発してきた海水流動や低次生態系モデルなどのさまざまな数値モデル体系を発展的に応用し, さらに炭酸系動態に関するモジュールをモデル中に組み込むことによって, Coral triangle海域中のインドネシア海域を具体的な対象として, 炭酸系動態, 特にCO_2吸収/放出特性の時空間分布特性の解明を目指した。当該年度は2013年6月に行われた調査航海に参加し、主にマカッサル海峡の表層海水中の二酸化炭素(CO_2)に関する現地データの取得に成功した。またこのデータも含めた形で同海域におけるCO_2吸収/放出フラックスの空間分布、その年々変動、長期変動傾向を議論した論文をまとめるとともに、同様の内容をインドネシアで行われた学会において公表した。モデル解析に関しては、低解像度で長期間(数10年間)モデルを回し、全炭酸や全アルカリ度といった炭酸系パラメータの再現実験を行い、CO_2動態を確認する作業を実施した。
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