研究課題/領域番号 |
11J00140
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
眼科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 桂二郎 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | ペリオスチン / 増殖糖尿病網膜症 / 網膜前増殖組織 / 核酸医薬 / マイクロアレイ解析 |
研究概要 |
前年度までに行った、増殖糖尿病網膜症(PDR)、増殖硝子体網膜症(PVR)に伴う増殖組織を用いた、DNAマイクロアレイによる包括的遺伝子発現解析において,増殖組織特徴的遺伝子群を抽出した。この遺伝子群の中で、我々は、最初に、ペリオスチンを第一の標的として、増殖組織形成への関与を検証した。ペリオスチンmRNAの発現は、網膜と比較して、PDR、PVR増殖組織中で著明に高い結果であった。PDR、PVR硝子体中の濃度は対照(非増殖性疾患)に比し有意に上昇していた。免疫染色で、増殖組織中のペリオスチンは、αSMA陽性RPE細胞に発現を認めたため、In vitroのアッセイ系を、RPE細胞を用いて行った。増殖性網膜硝子体疾患の病態形成への関与が知られているTGFβ2の刺激により、RPE細胞は、αSMA陽性細胞に形質転換して、ペリオスチンの発現が上昇し、培養液中への分泌が亢進することを確認した。次に、増殖組織形成過程における、ペリオスチンの機能について調べるため、細胞増殖能、遊走能、接着能、コラーゲンゲル収縮能への関与を検証した。ペリオスチン刺激により、RPE細胞の増殖能、遊走能、接着能は有意に亢進した。以上より、我々は、ペリオスチンが、増殖性網膜硝子体疾患の増殖組織の生成進展に関与していることを初めて明らかにした。次に、ベリオスチン抑制による、増殖組織制御の可能性を中和抗体、siRNAを用いて検証した。TGFβにより誘導される遊走能、接着能の亢進は、ペリオスチン抑制により有意に阻害された。また、PDR,PVR患者の硝子体中で培養したRPE細胞は、対照群(非増殖性網膜硝子体疾患の硝子体)と比較して、増殖、遊走、接着能は、有意に亢進し、その作用は、ペリオスチン抑制により有意に阻害された。In vivoの解析で、マウス、ウサギPVRモデルを用いた。ペリオスチンKOマウスでは、増殖組織の形成は有意に抑制された。したがって、ペリオスチンは、増殖性網膜硝子体疾患治療の新しい分子標的となる可能性があると考えられる。次に、我々は、ペリオスチンを標的とした新規の治療薬開発を目的として、新規の核酸干渉技術である一本鎖長鎖の「ボナック核酸・nkRNA」に着日し、開発元である(株)ボナック社と共同研究を開始した。nkRNAは、一本鎖の核酸分子であり、既存の代表的核酸医薬である二本鎖のsiRNAと比較して、次の4つの特長を持っている。(1)化学的安定性/生物学的安定性に優れるためドラッグデリバリーシステムを必要としない(2)一本鎖であるため、TLR3と結合せず自然免疫系を惹起しないため安全性に優れる(3)製造が安価で短期間で済む(4)特許に抵触しないため、ライセンス費用が節約できる。新規の核酸干渉基盤技術として日本国内では特許査定が得られている(米国・欧州では各国移行審査請求済み)。ヒト、マウスペリオスチンを標的としたボナック核酸は、数種類の候補配列の作製を行い、mRNAレベルでの抑制効果の比較検討を行い、最強配列の選定が終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
増殖糖尿病網膜症患者増殖組織の遺伝子発現解析により、新規関連分子であるペリオスチンを同定し、その機能、治療標的の可能性について、国内、国際学会で発表を行った。増殖性網膜硝子体疾患の病態解明、治療薬開発において、重要な知見を得ることができた。現在、ペリオスチンを標的とした、日本独自の核酸干渉技術であるボナック核酸開発に向けて、当教室は、企業と連携して取り組んでおり、現在、臨床試験計画作成の段階である。本年度の研究により、プロジェクトを急速に進展させることができ、新規治療薬開発に向けて前進することができた。
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今後の研究の推進方策 |
核酸医薬の選定は終了しており、今後、in vivoの薬効について評価を行う。また、臨床試験のデザインについても、九州大学AROと協力して、作成中である。
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